第2回:「遺したい“想い”を明確にする方法」
 
「あなたの想いは、誰に届いてほしいですか?」
財産は目に見えます。家や預金、株式、不動産――これらは数字や証書で示せます。
でも、「あなたの人生で最も大切にしてきた価値観」は、どうやって伝えますか?
「ありがとう」「ごめんね」「本当はこうしたかった」
そんな心の中の“言葉”は、放っておくと誰にも届かないままになってしまいます。
レガシープランニングで本当に大切なのは、財産だけでなく「想い」を遺すことです。
あなたが大切にしてきた生き方、家族への想い、これからの世代に伝えたい人生の教訓。
それらを“心の遺産”として整理し、言葉や形にしておくことが、未来への贈り物になります。
 
■ 遺したい「想い」を言葉にすることの意味
 
多くの人が、「ありがとう」や「愛してる」という言葉を照れくさくて言えずにいます。
それが結果として、家族にとっては「自分は大切にされていなかったのでは」という誤解を生むことも。
想いを明確にして伝えることは、あなたの人生の意味を、未来の誰かに届ける作業です。
人は誰もが、親から、そして先代から「言葉にならなかった想い」を受け継いでいます。
ならば、自分の代でその“見えない想い”を見える形にして、次に手渡していく――
それができるのは、あなただけです。
 
■ 実際に想いを残す手段とは?
 
想いを遺す方法は、さまざまです。形式に正解はありません。
重要なのは「あなたらしい形で残すこと」です。
 
① 家族への手紙
もっとも直接的で、もっとも効果的な方法です。
たとえばこんな内容を書いてみましょう:
• 子どもたちへ:どんなときに誇りを感じたか
• 配偶者へ:一緒に過ごした日々への感謝
• 孫へ:人生で大切にしてほしい価値観や教訓
• 兄弟姉妹へ:昔の思い出と和解の言葉
紙の手紙でも、Wordなどで作成した文書でも構いません。
また、ビデオレターも近年注目されています。
 
② エンディングノート
財産や医療希望だけでなく、「自分史」や「人生で大切にしてきたこと」を書ける欄があります。
書く内容例:
• 自分が影響を受けた本や言葉
• 忘れられない体験と、そのとき感じたこと
• 苦しかった時期をどう乗り越えたか
これらは、あなたの「生き方」を後世に伝える宝物になります。
 
③ 自分史ノート・写真アルバム
写真や出来事とともに、そのときの気持ちや家族への想いを書き添える形もおすすめです。
紙のアルバムだけでなく、最近ではスマホアプリで「音声付き回顧録」を作成する方もいます。
 
■ 想いを明確にするための問い
以下のような問いに、自分で答えてみる時間を取ることも大切です。
• あなたが人生で一番大切にしてきたことは何ですか?
• 後悔していることは?それを次の世代にどう伝えますか?
• 誰に一番感謝を伝えたいですか?なぜですか?
• あなたが子や孫に本当に伝えたい「生き方のヒント」は何ですか?
この作業は“感情の整理”でもあり、人生を振り返る深い時間になります。
 
■ 想いを伝えることは、家族への「最後のプレゼント」
人は亡くなった後に、その人の“本当の気持ち”を知ることがあります。
「こんなに私のことを考えていてくれたんだ」と知ったとき、遺された人の心は救われます。
レガシープランニングの中でも、想いを明文化する行為は“精神的相続”とも呼ばれます。
これは、家族の心に届き、次の世代の人生をも動かす力を持ちます。
 
■ 想いを残すことは「贈り物」
物質的な遺産は、使えば減ります。
けれど、あなたの言葉は、一度誰かの心に届けば、その人の人生に根を張り、時に困難を乗り越える力にもなります。
あなたが人生で学んだこと、感じたこと、信じたこと――
それは、あなたから家族への「目に見えない贈り物」です。