第5回:「あなたのレガシーを伝える手段とは」
あなたが丁寧に準備したレガシープラン。
財産を整理し、法的手続きも整え、想いを文字にした――
しかし、最後に忘れてはならないのが、「それを誰に、どう伝えるか」です。
いくら立派な遺言書や信託契約書を用意しても、肝心の「心」が届かなければ、
遺された人々は、あなたの真意を見失い、迷ってしまうかもしれません。
本記事では、あなたのレガシー(想い・価値観・生き方)を**“確実に伝えるための手段”**として、
「エンディングノート」「ビデオレター」「家族会議」の3つを紹介します。
■ 1. エンディングノート──「想いを記録するツール」
エンディングノートとは、あなたの意思・希望・人生の記録を自由に残すノートです。
法律的な拘束力はありませんが、“心を伝える”という点で非常に有効なツールです。
書ける内容の例:
• 医療・介護の希望(延命治療、認知症対策など)
• 葬儀やお墓の希望
• 財産リスト(遺言書とは別に補足として)
• 家族や友人への感謝・メッセージ
• 自分史、人生のハイライト、好きだった言葉
• 大切にしてきた価値観や、失敗からの学び
書くときのポイント:
• 難しく考えず、“独り言のように”素直に書く
• 書き方に正解はない。とにかく「自分の言葉」で
• 何度でも書き直しOK。定期的にアップデートを
エンディングノートは、家族にとって「心のガイドブック」となり、
あなたの温もりを感じる、何よりの贈り物になります。
■ 2. ビデオレター──「想いを“声と表情”で残す」
文章では伝わりづらい感情も、声や表情なら深く届きます。
ビデオレターは、あなたの“生の言葉”で想いを伝える方法として注目されています。
内容の例:
• 子や孫へ:人生で大切にしてきたこと
• 配偶者へ:感謝、これからも見守っているという言葉
• 親族へ:仲良くしてほしいというメッセージ
• 家族全体へ:この人生を歩んだ意味、未来への願い
撮影のポイント:
• スマホ1台でも十分。照明と背景を整えると好印象
• 一人で話しづらければ、誰かに質問してもらって自然な会話形式に
• 短くても構いません。10分程度でも気持ちは十分伝わります
ビデオレターは、「その人の存在そのもの」が残るという点で、非常に強いレガシーツールです。
■ 3. 家族会議──「その場で伝え、対話する」
最後にご紹介するのは、“最も直接的かつ効果的な方法”です。
それが「家族会議」です。
家族会議とは、法的な協議ではなく、家族みんなで「想い」を共有し、「これから」を話す時間のことです。
目的と効果:
• 財産の配分意図を事前に説明できる
• 将来の介護や看取りの希望を共有できる
• 家族内の役割や責任を明確にできる
• トラブルの予防になる
• 感情のわだかまりが解けるきっかけにもなる
開催の工夫:
• 時間を区切って「テーマごと」に話す(例:財産→医療→葬儀→家族への言葉)
• ファシリテーター(行政書士・信託士など)を交えるとスムーズ
• 最後は“感謝の言葉”で終えると、温かく締まる
家族会議は、あなたの「生きているうちにしかできないレガシーの共有」です。
■ 想いを伝えることは、“未来の対話”をつくること
想いは、しまっておくだけでは伝わりません。
言葉にして、形にして、届ける努力が必要です。
しかし、ほんの少しの勇気があれば、それは未来の大きな「安心」となって返ってきます。
• ノートに書き残す
• 動画で語りかける
• 家族で顔を合わせて伝える
どれも、「あなたの存在そのもの」が宿る手段です。
まとめ:レガシープランの最終章は、“伝える力”に宿る
レガシープランニングの目的は、「遺す」ことではなく、「届く」こと。
どんなに準備をしても、それがきちんと伝わらなければ、想いは迷子になります。
だからこそ、「あなたらしい伝え方」で、今から動き出してほしいのです。
「ありがとう」「ごめんね」「あなたに託したい」
――たった一言で、誰かの人生は変わることもあります。
あなたのレガシーが、未来の誰かの“希望”になることを願って。
5回にわたるシリーズ、最後までご覧いただき、ありがとうございました。