第3回「財産・相続の整理と分配計画」
「資産を遺すことは、愛情を伝える行為でもある」
レガシープランニングの中核には、「財産の整理と分配計画」があります。
これは単に“お金の話”ではなく、“家族への想いをカタチにする作業”です。
相続が原因で家族が争う――そんな悲劇を未然に防ぐためにも、あなたの意志と希望を明文化しておくことは極めて重要です。
今回は、財産リストの作成、相続税の基本、遺言書の作成、家族信託の活用という4つの視点から、実践的な準備の進め方を解説します。
■ ステップ1:財産を「見える化」する──財産リストの作成
まず必要なのは、「何を持っているか」を正確に把握すること。
人は思った以上に多くの“資産”を持っています。以下のようなカテゴリごとにリスト化しましょう:
• 金融資産:預金口座、株式、投資信託、保険解約返戻金など
• 不動産:自宅、土地、賃貸物件、別荘など
• 動産・その他:車、貴金属、美術品、骨董品
• 債務:ローン、借入金、連帯保証など
• デジタル資産:仮想通貨、ネット銀行、サブスク契約、SNSアカウント
これらを「資産台帳」として一元管理することで、家族や専門家が相続時に混乱することなく、スムーズな対応が可能になります。
■ ステップ2:相続税の基本を知る
資産を遺すとき、多くの人が見落としがちなのが「相続税」の存在です。
相続税は、遺された財産の総額によって課税されます。
✅ 基本の知識(2025年現在の例):
• 基礎控除額=3,000万円+(600万円 × 法定相続人の数)
• 例えば:相続人が配偶者+子2人(計3人)であれば、
→ 3,000万円+600万円×3人=4,800万円までは非課税
それ以上の資産がある場合、相続税申告と納税が必要となります。
また、以下のような対策も検討が必要です:
• 生前贈与:1年間110万円まで非課税(暦年課税)
• 生命保険の非課税枠:500万円 × 相続人の数
• 不動産評価の工夫:路線価や小規模宅地特例の活用
相続税対策は、早くから取り組むことで大きな効果を発揮します。税理士等の専門家の助言を受けながら進めるのが安全です。
■ ステップ3:遺言書で「意思」を明確に残す
遺産分割をめぐるトラブルの多くは、「故人の意思が不明確だった」ことに起因します。
だからこそ、遺言書の作成は“未来の安心”をつくる重要な手段です。
遺言書の主な種類:
種類 メリット 注意点
自筆証書遺言 費用がかからずすぐ書ける 法的不備があれば無効になる可能性
公正証書遺言 法的に最も安全・確実 公証人費用がかかる、作成に手間
秘密証書遺言 内容を他人に知られずに保管 手続きや管理にやや複雑さあり
遺言書には、財産の配分だけでなく、次のような内容も盛り込めます:
• 特定の子どもに介護への感謝を表すメッセージ
• 事業承継における後継者の指名
• 家族への想いや教訓(付言事項)
また、最近は「付言動画」や「手紙」など、心情を伝える手段と併用する人も増えています。
■ ステップ4:家族信託の活用という選択肢
特に高齢者や認知症リスクのある方には、「家族信託」が効果的です。
家族信託とは、資産の所有権を信頼できる家族に託し、自分の希望に沿って管理・運用・分配を行ってもらう仕組みです。
家族信託が活用できる場面:
• 認知症発症後の資産凍結を防ぎたい
• 相続人が障害を持っている/金銭管理に不安がある
• 不動産の共有・売却をスムーズにしたい
• 遺言では対応できない「2次相続」以降まで設計したい
家族信託は自由度が高い一方で、設計が複雑になるため、行政書士や司法書士、弁護士との連携が不可欠です。
■ 「相続」は人生最後のメッセージ
相続は、単なる資産移転ではありません。
あなたが築いた人生の成果と、それに込めた想いを、どう伝えるか――それが問われています。
「財産を誰に、なぜ遺すのか?」
「その人が、それをどう生かしてくれると嬉しいか?」
その一つひとつを、時間をかけて丁寧に考えることが、家族の未来への最高の贈り物になります。
まとめ:想いと資産の「橋渡し」をするのが、あなたの役目
レガシープランニングにおける財産整理と分配計画は、決して“お金の話”だけではありません。
それは、あなたの価値観と人生を、次の世代へ正しくつなぐための「実務と哲学」の融合です。