生前対策:遺言制度の基礎(2025年最新版)
遺言は「自分の意思」を法的に残すためのもっとも確実な手段です。普通方式は 自筆証書・公正証書・秘密証書の3種類(民法967条)で、方式ごとに要件や実務の手間が異なります。
本稿では、方式の違い/メリット・デメリット/無効を避ける要件/作成フローを、2025年時点の制度に沿って整理します。(根拠:e-Gov法令検索 民法)
1. 遺言の種類と要点(まずここから)
- 自筆証書遺言:遺言者が本文を自書。財産目録はPC等で作成可(各葉に署名押印が必要)。
根拠:民法968条・968条2項(e-Gov)および法務省解説。 - 公正証書遺言:公証人が作成、証人2名の立会いと署名押印が必要。原本は公証役場で保管。
根拠:民法969条(方式/証人2名)、日本公証人連合会の解説。 - 秘密証書遺言:内容を秘匿したまま「存在」を公証人に証明してもらう方式。無効リスク・保管リスク・検認必要等の弱点があるため実務では少数派。
出典:日本公証人連合会のリスク解説。
加えて、自筆証書遺言を法務局に預ける「遺言書保管制度」を利用すると、遺言の探しやすさ・改ざん防止に加え、家庭裁判所の検認が不要となるのが大きな利点です。
根拠:法務省「自筆証書遺言書保管制度」案内・運用ページ。
2. 方式別のメリット/デメリット(ざっくり比較)
方式 主なメリット 注意点
| 自筆証書 | 費用が抑えやすい/急ぎで作りやすい/財産目録はPC可 | 方式不備の無効リスク/保管・発見リスク/保管制度を使わない場合は検認が必要 |
| 公正証書 | 公証人が関与し原本は役場保管=紛失・無効リスクが低い/検認不要 | 証人2名の手配・費用が必要/予約・準備が必要 |
| 秘密証書 | 内容秘匿のまま「存在」を公証人が証明 | 内容不備の無効リスク/保管・紛失リスク/保管制度は使えず検認必要 |
3. 無効を避けるための「必須チェック」
- 自筆証書:本文は自書、日付・氏名の自書、押印(訂正は民法所定の方式)。財産目録はPC等で可だが、各葉に署名押印が必要。
- 公正証書:証人2名の立会い、公証人による読み聞かせ・閲覧、全員の署名押印など方式に適合させる。
- 共通:遺言能力(判断能力)/本人の真意/遺留分への配慮/最新状態の反映(婚姻・出生・離婚・不動産売却等の後)を確認する。
根拠:民法968条・969条、法務省・政府広報の解説(自筆証書は保管制度を使えば検認不要、公正証書は原本保管で紛失・改ざんリスクが低い)。
4. 作成フロー(実務チェックリスト)
- 目的と分配方針の整理(誰に・何を・なぜ)
- 方式の選択:自筆(保管制度利用を推奨)/公正(原本保管・検認不要)
- 財産目録の作成(PC可・各葉に署名押印)+相続関係の確認(戸籍)
- 草案→専門家チェック→清書
- 保管/予約:法務局の遺言書保管制度 or 公証役場の予約(証人手配)
- 保管後の家族共有ルール(所在・連絡先・遺言執行者)と定期見直し
5. 遺言執行者を指定するメリット
遺言執行者を指定しておくと、遺言内容の実行(名義変更・引渡し等)がスムーズになり、相続人間の調整負担が軽減します(民法1006条)。
事案によっては、専門家の選任や複数指定(補助・代替)も検討します。
6. よくある質問(FAQ)
Q. 自筆と公正、どちらがよい?
争いを極力避けたい/資産や関係が複雑なら公正証書が無難。費用を抑えたい・急ぐ
場合は自筆+保管制度を検討。
Q. 自筆の財産目録はPCで良い?
OK。ただし各葉に署名押印が必要です(民法968条2項/法務省解説)。
Q. 保管制度を使うと何が変わる?
法務局で保管→改ざん・紛失の予防に加え、家庭裁判所の検認が不要になります(法
務省)。
Q. 公正証書は誰が保管?
原本は公証役場が厳重に保管。紛失・改ざんリスクが低く、実務で広く用いられます
(公証人連合会・各公証役場の案内)。
Q. 遺言の見直しタイミングは?
婚姻・離婚・出生・死亡・大きな資産移動・不動産売却等の後、または5年に一度を目
安に。
7. 関連する生前対策
※ 本記事は一般解説です。最終判断は事案に応じて専門家へご相談ください。



