成年後見人選任で家族が直面した課題
――「守るための制度」が、家族を遠ざけてしまったケース
- 事例の背景
Dさん(82歳・女性)は軽度の認知症を患い、長年住み慣れた自宅で一人暮らしを続けていました。
娘のEさんは近所に住み、日常的に買い物や通院をサポートしていましたが、ある日、銀行から「預金の引き出しが難しい」と言われたことで、成年後見制度の利用を検討することになりました。
家族で話し合った結果、Eさんが家庭裁判所に「法定後見人の申立て」を行うことに。
しかし、申立て後に起きた出来事は、家族にとって予想外のものでした。
- 家族が感じた「壁」
家庭裁判所が選任した成年後見人は、家族ではなく**第三者(司法書士)**でした。
後見人は法律に基づき厳格な財産管理を行い、Dさん名義の預金通帳や印鑑を預かり、使途を細かく報告。
娘のEさんが介護用品の購入や修繕費に使おうとした際も、
「後見人の許可がないと動かせません」と制限を受けました。
制度上は正しい運用でしたが、Eさんは次第にこう感じるようになります。
「母のためにと思っても、まるで他人の家計のようで、自由がきかない……」
結果として、Dさんの生活の意思決定から家族が一歩引かざるを得ない状況になってしまいました。
- 成年後見制度の基本構造
成年後見制度は、判断能力が低下した方の財産や権利を守るための制度です。
裁判所が選んだ後見人が、本人の代わりに財産管理や契約行為を行います。
制度の信頼性は高い一方で、
- 家庭裁判所の監督が強い
- 支出には厳しい報告義務
- 柔軟な資産運用が難しい
という特徴があり、「保護はできても、生活の自由度が下がる」 という課題があります。
- 行政書士が関わった支援内容
清和行政書士事務所では、Eさんから相談を受け、次のような対応を行いました。
- 現状整理と制度の説明
成年後見制度の限界と、今後の生活設計への影響をわかりやすく整理。
- 家庭裁判所への意見書作成支援
「家族の意向を制度内でどう尊重できるか」を明記し、
生活費支出や医療契約などで柔軟性を求める提案を作成。
- 家族信託との併用提案
Dさんの不動産管理を家族信託に移すことで、後見人の監督範囲を整理。
裁判所も了承し、実務上の運用がスムーズに。
結果として、家族と後見人が役割を分担し、Dさんの生活の安定と家族の安心が両立できました。
- 制度の課題とこれから
成年後見制度は「悪用防止」には強い一方で、「本人の幸福」や「家族の支え方」にはまだ課題があります。
今後は、
- 家族の意思を尊重できる制度設計
- 財産管理だけでなく「生活支援」まで見据えた運用
- 家族信託や任意後見との併用による柔軟化
が求められています。
- まとめ
成年後見制度は「信頼を守る制度」であると同時に、「家族の距離を試す制度」でもあります。
Dさんの事例が示すように、
“誰が、どの範囲で、どのように支えるか”を事前に考えておくことが、家族の安心につながります。
行政書士は、申立て書類の作成だけでなく、家族と裁判所・後見人との間をつなぐ役割を担うことができます。
もし今「成年後見を使うべきか迷っている」段階であれば、ぜひ早めにご相談ください。
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