2025/7/1
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長年暮らしてきた部屋からの突然の「追い出し」 |
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第2章:長年暮らしてきた部屋からの突然の「追い出し」 裁判の当事者である高齢の被告(賃借人)は、その部屋に何十年も暮らしてきました。人生の大半を過ごした住居から突然「出て行け」と言われる衝撃は、想像に難くありません。賃借人にとって賃貸住宅は単なる「商品」ではなく、生活基盤でありコミュニティとのつながりの拠点です。その部屋を失うことは、単に屋根を失うだけでなく、人生のよりどころを一瞬で失うことに等しいのです。
高齢者にとって引っ越しは若年層以上に困難です。身体的な負担はもちろん、経済的・社会的ハードルも高くなります。例えば、新居探しの難航があります。長年住み慣れた地域を離れて新しい物件を探すこと自体が高齢者には大変ですが、それ以上に深刻なのが高齢ゆえの入居拒否です。実際に、立ち退きを迫られた76歳の近藤さんのケースでは、心臓病を抱えて生活保護を受給し毎月5万円の家賃補助を受けていたものの、「大家さんは年寄りにはなかなか貸してくれない」と嘆いていますfudosan-bengoshi.com。高齢単身者だと病気や孤独死のリスクを懸念され、貸主側が敬遠する傾向が未だ根強いのです。
さらに、引っ越し費用の捻出も大きな問題です。敷金・礼金、仲介手数料、引越費用など、新生活を始めるにはまとまったお金が必要ですが、生活保護や年金でギリギリの生活を送る人にとって、そのような費用を準備するのは容易ではありませんfudosan-bengoshi.comfudosan-bengoshi.com。住み替え先の家賃も、今より高くなるケースが多く、月々の生活をさらに圧迫します。近藤さんは公営住宅への入居を5度も申し込んだもののすべて抽選に外れました。公営住宅の数自体が減少し、競争倍率は50倍以上という「宝くじより当たらない」狭き門になっており、彼は「自分は絶対当選しないだろう」と感じたそうですfudosan-bengoshi.com。このように、公的支援住宅にも簡単には入居できない現状があります。
実際に、家賃滞納により明け渡しを命じられた高齢者の中には、住み慣れた住居を強制的に退去させられた後、住む場所を失ってしまう例もあります。例えば、家賃5万円の長屋で約70万円(1年以上)の滞納を抱えた73歳の独居老人は、明け渡し訴訟で欠席裁判の末に退去が決まり、強制執行の日を迎えましたgentosha-go.com。
当人は裁判所に出頭せず、判決確定後も居座っていましたが、執行官が家財道具を運び出し鍵を交換する強制執行の最中に帰宅し、「もう部屋には入れないよ」と告げられたのですgentosha-go.com。幸い近所の知人が一時的な寝場所を提供してくれましたが、荷物も持てないまま着の身着のままで退去せざるを得ませんでしたgentosha-go.com。 残された長屋は老朽化が著しく、内部の荷物が運び出されたことで今にも崩れ落ちそうな姿を晒していますgentosha-go.com。**このように、明け渡しは高齢者を突然生活基盤から引き剝がし、下手をすれば路上に放り出すほどの過酷な結果を招きかねません。**豊かな老後どころか「住む家がない老後」という現実が、誰の身にも起こり得るのです。
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