2026/1/9

第3回:外国人問題とは、本当に外国人の問題なのか

外国人問題とは、本当に外国人の問題なのか

──社会が「他者を引き受ける力」を失っていく過程

 

「外国人問題」という言葉が、あまりにも自然に使われるようになった。

雇用の現場、地域社会、制度運用の場面で不具合が生じると、その原因はしばしば「外国人が増えたからだ」と説明される。

 

だが、実務の現場に立ち続けていると、その説明だけでは、どうしても腑に落ちない。

なぜなら、同じ種類の歪みは、外国人が関与していない制度の場面でも、繰り返し現れているからである。

 

ここで起きているのは、外国人の問題ではない。

社会が「他者を引き受ける力」を、静かに失っていく過程である。

 

排除すれば、制度は健全になるのか

外国人を排除すれば、制度は健全になるのだろうか。

実務の現場を見る限り、その答えは明確に否である。

 

なぜなら、排除によって解消されるのは、摩擦の「原因」ではなく、

摩擦が目に見える形で現れている表面にすぎないからだ。

 

在留資格の手続、生活保護の申請、無料法律相談。

これら異なる制度分野に共通して見られるのは、国籍や属性の問題ではない。

 

制度の趣旨を理解しようとしない姿勢。

説明すること、説明を受け取ることを避ける態度。

そして、できる限り関わらずに済ませようとする文化。

 

これらは制度疲労の「結果」ではない。

むしろ、制度疲労を生み出し続けている原因そのものである。

 

排除の対象は、必ず移動する

この前提が変わらない限り、排除の対象は固定されない。

外国人が排除されれば、次は誰かが同じ位置に置かれる。

 

実際、生活保護の現場では、

制度は存在していても、申請に至る前の段階で追い返されるケースが少なくない。

 

無料法律相談においても、

制度としては整備されていながら、

相談内容を聞く前に「対象外」とされ、入口で閉ざされる場面がある。

 

ここに共通しているのは、

相手が誰であるかではなく、

社会が“引き受けること”を避けているという事実である。

 

外国人が排除されているのではない。

「手間がかかる存在」「説明が必要な存在」そのものが、

制度の外に押し出されているのである。

 

なぜ「外国人問題」だけが強調されるのか

では、なぜ外国人問題だけが、これほど強く、繰り返し語られるのか。

 

それは、外国人が

「違いを外在化できる存在」だからである。

 

言語、文化、国籍。

目に見える違いがあることで、

社会の不具合や制度の歪みを、

自分たちの内側ではなく、外部にあるものとして説明しやすくなる。

 

だが、その違いは原因ではない。

社会の前提が揺らいだとき、

最初に摩擦が可視化される場所にすぎない。

 

外国人問題とは、

社会がすでに抱えていた課題が、

最も分かりやすい形で表に出ている現象なのである。

 

問われているのは、日本社会の成熟度である

外国人問題を考えるとき、

本当に問われているのは、外国人がどう振る舞うかではない。

 

異なる存在が入ってきたとき、

それを制度によって整理し、

信頼によって支え、

対話によって調整できる社会なのか。

 

つまり、

日本社会自身が、どこまで成熟しているのか

という問いである。

 

制度は、人が真摯であることを前提に設計されている。

その前提を引き受け続けられる限り、

制度は不完全であっても機能する。

 

しかし、その前提を失った社会では、

誰かを排除しても、

次の「他者」が現れるだけだ。

 

結語:外国人問題は「鏡」である

外国人問題とは、外国人の問題ではない。

社会が他者を引き受ける力を、

なお保持しているのかどうかを映し出す鏡である。

 

排除や規制を重ねる前に、

私たちは一度立ち止まる必要がある。

 

問うべきなのは、

誰が悪いかではない。

私たちは、他者を引き受ける社会であり続けられるのか

という一点である。

 

この問いに向き合わない限り、

対象が誰であれ、

同じ問題は形を変えて繰り返されるだろう。

 

この問いもまた、

まだ終わっていない。

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